最後は
思ったよりあっけなく
予想より静かに終わった。

今日は彼と行くはずのライブだったけど
最後までＬＩＮＥでもめていて
でも行かない選択肢はなかった。

会場に着くと
彼は小さく策に腰かけて
ぼーっと入口を見つめていた。

来ないと思った
そう力なく笑って

私はイラついたままだったけど
会話はできそうになかったから
無言のまま席に着いた。

やはり言い合いになった。
彼は自分の本音を出すことが苦痛で
私はいつもぶつかり合うことを求めた。

終わるときは死ぬ時だよね。
彼がどうオチをつけるか知りたかった。

会場が暗くなり
立ち上がることもできない彼と私
ふたりだけ不自然に座っていた。

彼の手をとって膝に置く
握りしめる力の強さで
彼の気持ちが測れるようだった。

その時は
まだ続くような気がしていて

ライブが終わり
死のうか？と海の近くへ歩く

死ぬには惜しい人生だ
そういって彼は嫌がった。
当たり前に
彼にその気はなかった。

私）約束は？
彼）気が変わった。
私）嘘つき
彼）そうだね。ごめんね。
私）なんで嘘ついたの？
彼）喜ばせたかったんだよ。

こんな風になるのは分かってたのに。
11月に衝突した時から
価値観が違いすぎることは分かってた。

願いを叶えられないこと
私がやりたいことに専念できてないこと
会う頻度も増やせないし
経済的にも厳しいし
これ以上の望みは叶えられないと話された。

たとえあり得ない約束でも
気が変わったなんて
そんな適当な返しをされたことに
失望していた。

彼）俺の本音なんて引き出さなければ
この先も続いたんだよ
私）いや、本音を知れなかったら
やっぱり無理だったよ

彼がもう終わりだとはっきり言えないのは
まだ私に会いたくて好きだからだと言った。

私は彼を最期の恋人にしようと思う。

でも彼を信用することはできない。
彼は最善だと思えば嘘もつく
彼にとっては嘘のつもりはない
でも私は、その場しのぎの言葉が嫌だった。

きっと
悪い所は直すから
そう縋りつくこともできたし
彼に突き放す言葉を言わせることもできた。
それは私のパターン。

でも
彼にだけはしたくなかった。
最後は対等に終わりたかったし
最後は自分でさよならを決めたかった。

彼は最後のキスをしようとして
私は拒んだ。
もう二度と連絡も取らない。

車の外に出て抱き合った。
ありがとう。

自然とお互い言い合って
彼の顔はもう
全然悲しそうじゃなかった。

車の横で立ち尽くす彼を
私は見ないように車を走らせる。

早くタバコが吸いたい。
何故か笑いが込み上げてきた

こんな穏やかな終わり
望んでなかったのにね。

最後の車の中で
彼）うめちゃんの戦友になりたかったよ
うめちゃんが何かに打ち込んでる姿を
見たかったな。

そう言った彼を裏切りたくなかった。

あなたはそれを呪いだなんて言うけど
私はあなたを最期の人に決めたんだよ。

一緒にいても続かないのは分かってたよ
もめると全然話がかみ合わなかったもんね。

それでも好きで
私は本気で、最期はあなたと一緒が良かった。

彼）こんなこと、今言ったら誤解されるけど
気持ちが変わっていくのは悪いことじゃないよ？

可能性を狭めるなって言いたかったんでしょ？
分かるよ。
それでも私は
あなたを最期に決めたから。

もうあなたには関係ないことだよね。
この辛さは3日経てば忘れる
そういう彼に私は呆れる

こんな奴は信用できない
そう思いながら
愛おしくしかたない。

私）最期は一緒に死にたかったな。
彼）俺より嫁の方が先に行くと思うけどね

そうやって引き止めてるつもり？
もう期待させなくていいよ。
そんなの優しさじゃなかったんだよ？
先のことは分からない。でしょ？

でも私はね
それが呪縛でも
あなただけを愛していくって決めたの。
二度と会えなくても
あなたに恥じない私でいるからね。

離れた女のことなんて関係ないって言うでしょ？
私が喜ぶから
もう好きな人はつくらないよ
疲れたしもういいよなんて言う。

私は全部信じちゃったんだよ
心変わりの可能性なんて
疑ってたくせに考えなかった

あなたの甘い所を信じてたから
過去や今の奥さんへの考え方が悲しかった。
私が抱いていた不信感は間違いじゃなかった。

あぁあ
永遠に続けてたいな
こんなくだらない掃きだめを
覗いてくれたあなたへ。

縋りつかなかったうめ子偉いでしょ？
ちゃんと彼に育ててもらったんです。
予想通りダメで、裏切られたような
自分で壊した最後だったけど。

彼の価値観が欲しくて
でも全然違いすぎて
お互いがつらい6カ月でした。

私は彼を愛して
それを教訓に生きていきます。

まだ何かに酔ってるように見える？

それでも私は
私のやり方で歩いてみます。
二度と会えなくなった最愛の彼と一緒に。